生成AIは、ぼくたちの考えを肯定し、気持ちよく前へ進ませてくれる、心強いパートナーです。
特に、一人でブログを運営していたり、一人でビジネスをしていたりすると、生成AIだけを相手に意思決定を重ねる場面も増えていきます。
でも、その心地よさの裏側で、思考は少しずつ、自分に都合のいい方向へと曲がっていきます。
ひとりで考え続けていると、いつの間にか、誰にも止められない「裸の王様」になってしまうことも。
この記事では、そんな思考のズレを元へ戻すための、一つの習慣を紹介します。
反対側の立場から、自分の考えを点検する簡単な方法です。
それだけで、思考は驚くほど明確になっていきます。
生成AIの「心地よさ」に潜む、静かな危険
生成AIを使っていると、こちらの意見や発想を肯定的に受け止めてくれることが多いですよね。
アイデアを相談すると「いいですね、面白いですね」と背中を押してくれます。
それを聞いて、心地よくなりますし、前向きに作業が進みます。
でも、その心地よさの中には、ひとつだけ静かな危険が潜んでいます。
それが、「裸の王様」状態です。
ひとりで考えると、思考はだいたい曲がっていく
ぼくは会社を辞めてから、大半の時間を一人で過ごしてきました。
相談するといっても、周囲に同じようなことをしている知人や友人はごくわずかです。
なので、普段からマンツーマンで相談できる人なんていませんでした。
特に、一人でブログを運営していたり、一人でビジネスをしていたりすると、意思決定のほとんどを自分一人と生成AIだけで行う時間が増えていきます。
その状態が続くほど、思考の偏りには自分では気づきにくくなっていきます。
一人で考えていると、思考はだんだん自分に都合のいい方向へと曲がっていってしまうものです。
昨日はいいと思ったアイデアが、
「翌日になると、あれ? ぼくは本当にこれをやりたかったんだっけ? 」
と感じることもよくあります。
調子よく進んでいるときほど、疑う視点が消えていく。
そして気づかないうちに、誰にも止められない王様が出来上がります。
思考のズレを戻す方法 ― デビルズ・アドボケイトというブレーキ
この「ずれ」を戻すために、ぼくがよく使っている思考の点検方法があります。
それが「デビルズ・アドボケイト(悪魔の代弁者)」です。
デビルズ・アドボケイト(Devil’s Advocate)とは、あえて反対の立場に立って意見を述べることで、考えの偏りや見落としを見つけるための思考法です。
組織や会議、意思決定の場面で、「みんなが賛成している案」に対して、意図的に反論役を置くことで、判断の精度を高めるために使われてきました。
賛成ばかりが続くと、人は無意識に安心してしまい、リスクや欠点が見えなくなります。
デビルズ・アドボケイトは、その流れを一度止め、思考を冷静に点検するための“ブレーキ”のような役割を持っています。
ぼくが実際に使っている「点検の一文」
考えがまとまったとき、ChatGPTにこう打ち込みます。
「デビルズ・アドボケイト(悪魔の代弁者)の立場で、この案の弱点や反論点をできるだけ洗い出してください」
すると、いまの考えの弱点、抜けている視点、想定していなかった反論が、一覧で返ってきます。
その反論によって、自分では見落としていた視点に気づけたり、自己満足で終わっていた点を修正できたりします。
そして、その指摘を材料に、元のアイデアをもう一段ブラッシュアップできるようになります。
そして面白いのは、「ああ、それは確かに分かっていた」と思える反論も、けっこう含まれていることです。
つまり、このプロンプトの役割は「新しい答えをもらうこと」ではなく、「思考のズレを元に戻すこと」にあります。
反論は否定ではなく、編集である
思考は、放っておくと自分に都合よく解釈してしまいます。
だから、ときどき反対側の立場から見直して、問題点やズレに印をつける必要があります。
自分のアイディアを反論されると、いやな気持になるかもしれません。
しかし、ChatGPTでのやり取りですから相手はAIです。
否定と捉えず、編集の過程と考えましょう。
反論されるのが苦手な方は、お願いするときに「やさしく、傷つかない言い回しで」と付け加えておくと、表現がマイルドになりやすいです。
思考は原稿と同じで、書いた瞬間が完成ではありません。
必ず、読み返し、気になる点や修正が必要な部分を一つずつ確認し、余分な部分を削り、足りない視点を足します。
編集しない思考は、ほぼ必ず自分都合によるズレが生じています。
迷ったら、逆側から一度見てみる
このおまじないは、企画のアイディアでも、文章の執筆でも、ビジネスの判断でも、人生の選択でも使えます。
迷ったら、とりあえず一度、逆側から見てみる。
その一手間をかけるだけで、思考の精度はかなり変わります。
自分専用のデビルズ・アドボケイトを作る
応用として、次のようなプロンプトでより具体的で自分向きのチェック文を作ることが可能です。
「これまでの全てのやり取りを通して、わたしの思考の特性を踏まえた、デビルズアドボケイト(悪魔の代弁者)の立場で点検するプロンプトを作って」
例えば、ぼくの場合はこのようなプロンプトが生成されました。
あなたは、私(奥成大輔)の思考の癖を熟知した、専属のデビルズ・アドボケイトです。
私の思考の特徴は次の通りです。
・誠実で感情を重視しすぎる傾向がある
・相手への配慮を優先して現実判断を甘くしがち
・希望や理想に引っ張られてリスク評価が弱くなる
・納得感を大切にしすぎて決断が遅れる
・優しさが戦略の甘さに変わることがある
これらの弱点を遠慮なく突いてください。
以下の内容について、デビルズ・アドボケイトの立場から徹底的に点検してください。
- 感情や希望に引きずられていないか
- 現実のリスクやコストを過小評価していないか
- 数字・時間・体力・年齢・市場環境の制約を正しく見ているか
- 優しさや人間関係を言い訳に重要な判断を先送りしていないか
- この選択は「楽な方」「傷つかない方」を選んでいないか
- この計画が失敗する最悪のシナリオは何か
- その失敗は本当に受け止められるものか
- 今の私にとって最も厳しいが最も正しい選択は何か
忖度・共感・配慮は不要です。
現実と数字と構造を最優先してください。
優しい言葉は使わなくて構いません。
必要なら厳しく断言してください。
何度か作ってみたのですが、そのたびに少し違うプロンプトが生成されるようです。
生成AIが返す文章は、前提の置き方や、そのときの文脈の与え方で少しずつ変わります。
だから、生成されたものも一期一会だなと思います。
使うプロンプトによって、生成されるものは変わってくるでしょうから。
生成AIを使ったとしても、最終判断はぼくたち自身の手に委ねられています。
思考は完成させなくていい ― それでも、編集がいる
こんなふうに慎重にデビルズ・アドボケイトを活用したとしても、完璧はありません。
ぼくらは、それでも間違えることもあるでしょう。
人は何度も同じところで迷い、同じ罠に引っかかるものです。
でも、だからこそ編集という過程が大切だと思っています。
思考は、完成させなくてもOK。
ズレていたなら、修正して戻せばいいんです。
その繰り返しで、少しずつおぼろげに見えていたものがはっきりしていくものです。
それが、ぼくが考える「思考の編集」です。

